はじめての第二言語習得論講義 - 第2章
3つの言語習得理論
行動主義 (behaviorism)
代表的研究者:バラス・スキナー (B.F. Skinner)
主張:子供の言語習得は習慣形成 (habit formation) である
- 子どもが周囲のまねをする
- 周囲がほめる
- 繰り返し
この循環によって言語習得が進むとする立場。
生得主義 (nativism)
代表的研究者:ノーム・チョムスキー (Norm Chomsky)
主張:普遍文法 (Universal Grammar, UG) = 普遍原理 + パラメータ
普遍原理:人間が生まれながらにして持つ規則や原理の集合。言語共通の特性。
パラメータ:個別言語の文法やスキル。環境によって可変。
この理論では、人間に生得的な言語能力が備わっているとする。
創発主義 (emergentism)
代表的研究者:マイケル・トマセロ (Michael Tomasello)
主張:用法基盤モデル (usage-based model) - 言葉は社会におけるコミュニケーションなしに発達しない
批判的視点:言語教育用CDやテレビを再生するだけでは話せるようにはならない。
前提となる人間の能力:
- 他者の意図を読む能力
- 共同注意
- 心の理論
- パターン認識能力
トマセロの立場では、コミュニケーションが言語習得の必須条件であるとする。
感想・所感
トマセロの用法基盤モデルへの支持
個人的には、トマセロの主張する用法基盤モデル、つまり「言葉は社会におけるコミュニケーションなしに発達しない」という主張を支持したい。考えた内容をその言語特有の文法や規則に落とし込んだりするにはコミュニケーションが必須に感じるからである。また、言語には文化背景があるとも考えられるので、他者文化をコミュニケーションを通じて理解するということも重要そうである。これは心の理論の延長にあたるかもしれない。
疑問点・今後の課題
一方で、トマセロの主張だけを採用すると言語学習における座学が意味をもたなくなる(というより弱くなる)ので、座学の場合にはどのようになるのか、AIを用いたアウトプット学習やインタラクションは果たして用法基盤モデルに含まれるのか、そうなると座学とコミュニケーションの差は具体的に何になるのか、は今後気になるところである。
例えば、実は「コミュニケーションなしに発達しえない」ではなくて、単に「自分の考えを伝えようとする意図なしには発達しえない」と言えないだろうか?